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断章
2009-08-31 23:30:00
テーマ: 政治・経済
いわゆるアンダードッグ効果が働いて、新聞が予想を出したよりも民主の獲得議席は小さくなり、本来なら落選すべき多くの自民の議員が生き残りを果たした。投票率も期待した70%を超えることができなかった。小泉構造改革によってボロボロにされたはずの中国や四国や九州の地域で、有権者が再び自民の議員を選出して国会に送り出したことは意外で残念に思われる。選挙結果について特に大きな感慨はなく、テレビの世界のお祭り騒ぎの情景を空しく眺めている自分がいるだけだ。「政権交代のある民主主義」の嘘臭さをこれから国民は知ることになるだろう。マスコミは、早速、今度の選挙の結果について「国民が自民党にお灸をすえた」と総括し定義づけしている。その程度の言葉の表現にしかならないほど、日本の「憲政史上初の政権交代」は軽いのである。マスコミが全部お膳立てをして、マスコミが言うとおりに票が動き、テレビに出てきた民主の議員がマスコミの前で嬉しそうに尻尾を振るから、選挙の結果もそれを超えた意義のものにはならない。マスコミの人間が顔面蒼白になる結果にならない。本当に政治を変えるということは、テレビの画面から岸井成格を消すことだ。古館伊知郎が選挙や政治の報道に携われないようにすることだ。
一票の格差の言説と地域間格差の起源 - 投票日を前に思うこと
2009-08-29 23:30:00
テーマ: 政治・経済
投票前の最後の機会に、今回の選挙を見ながら思いついたことを幾つか。一つは地域間格差と一票の格差の問題で、地方の問題がこの選挙で正しく議論されなかったのは残念だった。マニフェストの比較だとか財源論とか、ほとんど意味のない話ばかりが財界に飼われた政治学者やマスコミの人間によって取り上げられ、日本の現実の問題に光が当てられなかった。地方が今どうなっているかを都会の人間は知らない。個人的な事情があり、私は春から何度も帰省していて、田舎が想像を絶する状態に置かれていることを知ったが、東京で暮らしている人間はそうした状況に想像が及ばない。マスコミで報道されないから、何もわからず、例えば、無駄な道路ばかり作り続けているなどと思い込んでいる。結論から言うと、90年代初頭の「政治改革」のときから言われ続けてきた「一票の格差」論は、基本的人権の問題を偽装して正当性を捏造した新自由主義のイデオロギーだ。政治学は「一票の格差」論に対して正面から批判の議論を提起し、地方選出の国会議員の数減らしに歯止めをかけ、80年代以前の国民代表の地域配分のバランスに戻さなくてはいけない。首都圏や関西の議員の数を減らし、北海道・東北・北陸・中国・四国・九州などの地方の議員数を増やさなくてはいけない。  
政権交代と政治理念 - 住沢博紀、ルジャンドル、山口二郎
2009-08-27 23:30:00
テーマ: 政治・経済
本日(8/27)の朝日新聞には、民主党が320議席を獲得するという選挙情勢が一面に出ているが、それ以外に、非常に注目すべき選挙関連の特集記事が国際面(11面)に載っている。3人の内外の国際政治の専門家による衆院選に対する論評が紹介され、その中の、特に住沢博紀(日本女子大・政治学)とジョエル・ルジャンドル(仏RTL日本特派員)の二人の議論が素晴らしい。久しぶりに朝日新聞紙上で納得できる政治評論を読むことができた。住沢博紀の名前は初めて見たが、日本の現実政治に対する基本視角は私と殆ど同じで、こういう政治学者がいたことに率直に驚きを感じる。もうアカデミーから絶滅していなくなったと思っていた。引用しよう。「欧米の主要政党には固有のプリンシプル(基本理念)とプログラム(基本政策)がある。米国では日常的に人々の価値観と各政党が結びついている。欧州でも伝統的に各政党の理念は国民にとって自明なものだ。これを土台に選挙前に示されるのがマニフェストである。かたや日本は、郵政民営化が争点だった05年選挙で大政党が自由主義に近い立場で戦い、今回はその反動で『社会的な問題に配慮する』と口をそろえる」。  
低調な風景 - 酒井法子事件はテレビから選挙を消すための政治工作
2009-08-26 23:30:00
テーマ: 政治・経済
選挙戦はとても低調で、盛り上がりなく投票日を迎えつつある。終盤になっても、麻生首相の口から聞こえてくるのは民主党に対する悪質な中傷攻撃ばかりであり、そうでなければ「貧乏な若者は結婚するな」という暴言の類でしかない。ネガティブキャンペーンという選挙用語を使って表現するのがそぐわなく思われるほど、麻生首相の選挙での言動は粗暴で醜悪で汚らわしい。ネガティブキャンペーンと言うのであれば、それなりに効果が練られた戦術性や計画性が受け手の側に感じられるはずだが、そうした要素が何もなく、単に野蛮で愚劣で一人よがりな暴言や戯言が連発されているだけなのである。今度の自民党の選挙の代理店はどこが担当しているのか訝るが、おそらくマニフェストの文言や意匠やCMや演説の内容も、全て麻生首相本人が関わって指示を出しているのに違いない。エージェントの仕事はクライアントのイメージを高めることだが、麻生首相や自民党から出てくるもの(発言・映像・図画)は、悉くイメージを落とす方向に作用している。知性と感性に問題のあるプランナーが携わっている事実は否めないが、プロの提案を麻生首相が受け付けず、自分の趣向を押しつけて、ひたすらセンスの悪いプレゼンテーションやメッセージになるのだろう。
イデオロギーの選挙と「右と左」のトレンド - 民主党の旧自民党化
2009-08-24 23:30:00
テーマ: 政治・経済
今回の選挙での麻生自民党の戦略は、一貫して民主党に対するネガティブ・キャンペーンに徹していて、無意味な粗探しと聞くに堪えない中傷や暴言で埋め尽くされている。まともな政策論議など何一つない。「政権交代」が起きる歴史的な選挙でありながら、討論のレベルは、これが日本人の国政選挙の論戦かと目を疑うばかりの悲惨な状況を呈していて、テレビを見る度に(特に麻生首相の顔が映ると)気分が悪くなる。選挙戦の序盤では、マスコミと手を組んで民主党の財源論叩きに明け暮れていたが、大敗の情勢が明らかとなった中盤には度を越して品が悪くなり、演説内容も渋谷の街宣右翼並みの低劣なものになった。「国旗を切り裂いた」云々の、まるで暴力団の言いがかりを聞くような話が延々とテレビで放送されたが、このような主張を自民党の党首が選挙でするのを聞いたことがない。常識で考えても、放送時の編集でカットされるのが当然だと思うが、なぜかNHKはこの問題が選挙の主要な争点のように大きく報道し続けた。自民党側から要請が入っているのだろう。異常なことが起きているのに誰も異常だと言わない。マニフェスト選挙と言いつつ、今度の選挙の中盤は政策プロパーではなくグロテスクなイデオロギー攻撃が主役になって、人々の関心に無理やり割り込んでいる。  
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