この日、空はしろく、しろく、くもっていた。
千羽鶴の先には、山と積まれた、瓦礫。
すべてが、かけがえのない思い出。
すべてが、命をけずって築き上げた財産。
「この建物も4月の頭ぐらいまでは漁網がひっかかっていたけど……」
「うん、ずいぶん片付いたとおもう」
「そうだね、だんだん片付いてきれいになっていくんだね」
「……」
「どうしたの?」
「片付いた、片付いた、きれいになった、きれいになったって、外から来た人はいうけれど、おれらにとっちゃ……それまで当り前の日常だった風景が、まったくちがう場所になっちまった、そんな感じなのさ。いくらきれいなったって、もとにはもどらない」