人形の見る夢
第1章 ビスクドール(はちみつ)
人形の見る夢
主を待っている。
ここの人形たちは、買い手が見つかるのを、生まれたときからずっと持っている。
「子供のおもちゃに買われていくのは嫌よ。あっという間に汚れてしまうわ」
隣で、ハニーブロンドの美しい少女が呟く。引きずりそうなほど長い髪と輝くばかりの青い目。彼女を好きになる人は多いけど、値も張るからまだ買い手がつかない。
「大丈夫よ、貴方は高いから。子供の玩具にはされない」
「ふん…、高すぎるのよ。このままじゃ買い手がつかないまま賞味期限が切れるわ」
この子はとてもプライドが高い。この高値も最初のうちは自慢の種だった。
でも本当の性格は素直で可愛いのだ。
「ねえ、マスターに頼んで。私このままじゃ買い手がつかないわ」
「駄目よ、それじゃ子供の玩具に買われちゃうわ。大丈夫、今に素敵な主人が貴方を迎えに来る」
そう言えば、東洋の女神のようなビスクドールはほっとしたように微笑んだ。
「ありがとう。ねえ、あなたはもうかなり長くここに居るようだけど、なぜ?」
「私のことはいいの」
「…気分を悪くしたのならごめんなさい」
「違う、本当に私のことは気にしなくていいの」
私は商品ではないのだから…。
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