告白の行方
第1章 初めての告白
金曜日、深夜10時、地上3階の資料室。どこかで雨の音を聞きながら、彼女はうっすらと微笑みを浮かべる目の前の男に震える声で言ったのだ。
「迷惑だって分かっています」
最大の勇気を振り絞り
「でも聞いてください。ずっとあなたが好きでした」
彼の綺麗な顔が歪む事を覚悟しながら。
彼女は自分の事をよく知っていた。
“誰にも見向きもされない、つまらない女”
だと。白すぎる肌に、まんまるほっぺ。さっぱりしすぎた目元は、平安時代だったら多分超美人。でも現代じゃただのおかめ。性格も容貌の通り消極的で、地味な生き方から飛び出せず、教科書通りに堅実に生き、人生一度のモテ期もなく。
それに引きかえ彼はどうだろう。ちょっと眉を細くすれば、ホストクラブのナンバーワンでも通りそうな整った顔立ちと、デザイナー物のスーツが良く似合う細マッチョな体型。思っている事が顔に出やすい性格でさえなければ、間違いなく俳優になれたと誰もが思う完璧さ。しかもそれだけじゃない。その優秀さゆえに彼は異例の大出世で、28歳の時にはその若さで社長秘書に抜擢されていた。当然、周りにはいつも美貌と才能を兼ね備えた美女達が取り巻いていて、平凡な彼女が割り込む隙間なんか無い。それでも、どうしても気持ちを伝えたかった。
「好きなんです」
かすかに声が揺れる。きっと今の自分は泣き出しそうな顔をしているに違いない、そう思いながら、これまでの意気地のない過去におさらばしたかった。
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