女神との契約 自身で立ち上げたばかりのPMC(民間軍事会社)であるライカ―・アビエーションPLCのオフィスの片隅で、届けられたばかりの『コクーンシステム』の梱包を解き終わったウイリアム・ライト(通称ビリー)は、窓を開けて目を閉じた。その瞬間、不意にフラッシュバックに襲われた。 それはビリーがアメリカ陸軍在籍中に参加した戦闘で、彼が100m程の距離で狙撃したターゲットの一人の断末魔の表情のようである。何かを喋っているかのようにも、それともただ表情が歪んでいただけかもしれなかった。 ランド・ウォーリアー用ヘルメットに装着されたコンビナーレンズ(光学照準器、昼夜間兼用熱線映像装置、射撃指揮装置、レーザー測距装置LRF、デジタルコンパスなどが表示できる、ゴーグル状のディスプレイ)越しではなく、昔のスコープ越しにみる映像のようで、肉眼でも見てみたが、ターゲットはすでに倒れていた。生きるか死ぬかの極限状態に身を置く兵士ならば、誰しもがそんな体験はするし、ビリー自身何度も同じような夢を見たことがある。 ただ、いつもと違うのは、 その場面にはまったく見覚えが無いことと、そのフラッシュバックにはミゾオチのあたりがザワザワする気持ちにさせられたことだった。