花屋の立ち退きを阻止して下さい
第1章 来訪者
雪がシンシンと降る、真っ暗闇の夜。眠れなくて、ランプに光を灯したセリエルは、目をこすりながら、柱の掛け時計を見上げた。
午前5時。
────────── 中途半端な時間に起きちゃった…。
でも、まだ暗いかと思いきや、外はすでに仄かに明るく、白く霞む窓越しに降り積もる新雪も、綿毛のように白い。
「ん?」
その時、ふっと外を見やると、不思議なほど、青い焔が出現して、ギョッとした。最初は小さく、それから段々とその焔は大きく…こちらへと近づいてくる。
「きゃああああぁぁぁぁぁあああああ!!」
悲鳴を上げるセリエルの頭上を、その青い焔は、部屋を突っ切って、素通りしていく。
バンッ!
ドアを蹴破る勢いで自室を飛び出すと、迷わず、アルファロの部屋へと走った。
────────── 幽霊だ、幽霊だ、幽霊だ、幽霊だ、幽霊だっ!!
気が重くて、ボケッとしていたが、これで一気に目が覚めてしまった。
暗がりの廊下を右に走って、突き当たりの部屋まで到着すると、どんどんどん、とドアを叩く。
「出たああぁぁぁっ!!」
こちらの部屋には勝手に入るなと釘を刺した手前、アルファロの部屋にも、勝手には入れない。たまらずドア越しに叫ぶと、アルファロを待つ。
ほどなくして開いたドアの向こう側には、不機嫌そうなアルファロの顔があった。朝の5時など、ここ最近は起きれた試しがない。いつも7時起きなのだから。
「…朝から絶叫するの、やめろ…。ご近所迷惑だろ」
「出た出た出たのぉっ!! 幽霊だよぉっ!!」
パニック状態で、それどころじゃないと訴えるセリエルだが、アルファロの反応は、だからどうした!? とでも言わんばかりで、騒いでいるこっちがバカみたいに思える。
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