果てしなく長い物語
第1章 果てしなく長い物語 一章 幼少編
「兄貴、明後日親族が俺の店に集まるんだけど、兄貴はどうする?」
弟がこうして俺に話し掛けてくるなんて、半年ぶりぐらいだろうか。
俺は一別すると、少し間を置いてから言った。
「そんな時ばかり親族なんて言葉を使わなくていいよ」
吸い掛けのタバコを灰皿へ押し付けると、席を立ち居間から出ようとした。
「何だよ? そうやって逃げるのかよ?」
背後から冷たい言葉が刺さる。
俺はゆっくり息を吸い、目を閉じた。
そろそろもういいんじゃないか。
「おまえが俺の事を嫌いなのは、ずいぶん昔から気付いていた…。最近俺も気付いたんだ。おまえの事が嫌いなんだってな。もう関わりを持ちたくないんだ。頼むから声を掛けないでくれ。あと一つ言っておくが、戸籍上おまえとは兄弟でない。だから兄貴という言い方も困るからやめてほしい」
それだけ言うと、また俺は歩き出す。
鉄筋の階段をゆっくり上がりながら色々な事を考えていた。
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