海の家 〜10年越しの恋〜
第1章 【臣】前半
あたしには忘れられない人がいる。
小学校の時に両想いだった”臣君”。
大好きで大好きで…
大きくなったら結婚しようねって約束してた。
離れたくなかったのに…
ずっと一緒にいたかったのに…
あたしの両親の転勤で離ればなれになってしまって
それっきりだった…
連絡先もわからない…
今、どこにいるのかも…
会いたい。
会いたいよ、臣君…。
高校を卒業したら
東京の大学に行きたい。
東京に戻ったら…
もしかしたらまた臣君に会えるかもしれない。
あたしはそんな僅かな可能性を信じて
受験勉強を頑張ってた。
すると夏休みに
友達から連絡がきて…
3日間だけ、海の家でバイトしないかって。
元々お盆には東京に行く予定だったから
あたしはその誘いを受けて
東京の海の家で働くことにした。
東京だから…
臣君に会えるかも…なんて…
東京にどれだけの人がいるか
そんなことはわかってるのに
期待してしまう自分が情けない。
それでも会いたかった…
どこかですれ違うだけでもいい…
そしたら絶対に連絡先を聞いて…
自分の気持ちをもう一度伝えたい。
まだ好きだって…
大好きだって…
そして…確かめたい…
「あの約束…覚えてる?」
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