雪天使~お前に捧ぐカノン~
第3章 act,2:出会い
シャルギエルは好奇心で昂ぶる気持ちを胸にバイクを走らせてゆくと、歓楽街を抜け荒地とも空地とも言うべき場所に出た。そこから先はただ一本、長い事整備されていないひび割れボロついたアスファルトの旧道が真っ直ぐに伸びている。
一瞬本当にこの先に何かあるのか疑ったが、目を凝らせばずっと遠くにポツリポツリと建物らしき代物があるのが窺えた。それを目当てに更にバイクを走らせると漸く廃墟とも知れない何とか形を維持している建物が三、四軒程現れたかと思うと、再び広い荒地に出た。
寂然とした空間が二百〜三百メートル位続く中、建て壊された痕跡であろう無残に崩れ落ちた瓦礫の残骸や、剥き出しになった煉瓦やコンクリートの土台等が道路の両脇所々に見て取れる。そんな土台等の割れ目からは、生命力の強い雑草が茫茫に生い茂っている。
少し徐行しながらそんな周囲を見渡しつつ前進していると、今度はやっと賑やかな声と共に居住区らしき場所に出た。それでもどれをとって見てもみすぼらしく、頼りない建物ばかりがまるで迷路の様に密集していた。
そこでは小さな黒人や白人、アジア系の子供達が入り混じって空地などでバスケや飛び縄でのダブルダッチをして遊んでいる。
無造作な雰囲気ではあるが、床屋や小さなショップ、バー等もあるみたいだ。
建物の影や年期の入ったベンチなどには普通にホームレスらしき男が数人、寝転がったり地べたに座り込んで酒を飲んだり煙草を吸ったりしている。果たして煙草かどうかも疑わしいが。
そんな正に貧民地区(スラム)に、真っ赤な高級バイクでノコノコと乗り込んで来たこの世間知らずの金持ち息子の存在は嫌でも目立った。
それを見つけた数人の子供達が目を輝かせながら駆けて来るや否や、口々に騒ぎながら後を追いかけてきた。
「スゲー!」
「かっこいい!」
「このバイクあんたのかい?」
14