雪天使~お前に捧ぐカノン~
第4章 act,3:オーファン
カノンとロードに促がされるままに歩いている途中に、何軒もの廃墟の様なコンクリートや煉瓦造りの建物が両脇に立ち並ぶ土道の通りに出た。
酷い物ではトタンやベニヤ板等だけの間に合わせで作られた様な、掘っ建て小屋もちょくちょく目の当たりにさせられた。その中にはチラチラ見える限りでも数人の子供だけがこもっていたり、みすぼらしく痩せ細った老若混合の夫婦とその子供らしき、一見“家族”と思しき存在が確認出来る。
道中幾つもの一斗缶やドラム缶等で火が焚かれていた。この雪降る厳冬を乗り越える為であるのは明らかである。
「……何だここは……?」
シャルギエルは声を潜めて、カノンにそっと訊ねる。
「ここは貧しい人々が寄り集まって生活している、集落みたいな所ね。貧富の格差で最終的に社会から脱落した人々が流れ着くのが、このスラム街。もしくはここや歓楽街は、野良の犬猫の様に普通に大人になりきれない身勝手な親から、赤ん坊がその辺に捨てられる場所でもある。その赤ん坊を似た境遇で成長したストリートチルドレンの子供が見つけて、共感を覚えるから拾って育てる……。歓楽街のストリートチルドレン達も最終的にはこのスラムに居場所を見つける。そして昼間一稼ぎの仕事をねらって街や工場に子供の身で出掛けて行くのが大半でね。ここの住民達もそうさ。ゴミ山なんかは宝の山だ。そこで衣類を拾ったり換金出来そうなゴミを掻き集めて売りに行くのさ。この町にはいくつもの子供同士だけのグループがあってね。そういったグループ内の子供同士で助け合って拾ってきた赤ん坊を育てていくの。時には心ある大人に拾われる恵まれた赤ん坊もいるけど、ストリートチルドレンとして育つ子がほとんどね。でもそれで無事大きく成長出来る赤ん坊はその半分。後は病気が主で死んでしまう……それがこの町よ。モラルも秩序も常識も存在しない。ただ一分一秒でも長くいかに無事生き延びられる子供がいるか。……この町はこの世の地獄なのさ」
シャルギエルにとっては余りにも突拍子もない話で正直理解に苦しんだ。
そんな馬鹿げたとても人間とは思えねえ日常が有り得る訳がねぇ、とさえ思った。そこまで腐った世界があったら今頃ニュースになってる筈だ。苦労知らずの彼は迷わずそう考えた。
27