雪天使~お前に捧ぐカノン~
第5章 act,4:アモーラル
「ち……こんな事ならテイクアウトのチャイナフードでも買っておくんだったな」
シャルギエルは溜め息混じりで言った。
ハンバーガーやヌードルといったジャンクフードが当たり前の様に出てこない辺りが、根っからのセレブ魂を感じさせる。
「何よ。お腹空いたのかい?」
彼の上で頭をもたげて訊ねるカノン。
「いやそうじゃねぇけど雪だろう。バイク出せねぇからな。もう日も暮れるし……まさかここに家の車寄こしたら場所が場所だけに、一家騒動になるのが面倒臭え」
「外泊はいいのかい?」
「まあ外泊はちょくちょく気分転換で、リゾートホテルとかに勝手に一人で何度もしてたりするから、今回もそうだとTELで誤魔化しておきゃあスルー出来るだろうが……って、俺をまさかここに泊める気か?」
「何だよそれ! どうせここはボロ家さ!」
カノンはプッと膨れっ面になると、ようやくシャルギエルから飛び退いて木箱に腰を下ろす。
「いや、そうじゃねぇ。つかまぁ確かにボロは否定出来ねえけど、何つぅかその……同じ部屋でその……女子と寝るというのは初めてで……いやまあちゃんと間にロードもいるんだけどよ!」
ムクリと上半身を起こしてから、何か口にすればする程余計気恥ずかしい事を言ってそうで、一人アタフタしては早口になる。
「……何だい。欲情しちまうって言いたいのかい?」
カノンがからかう様に髪を後ろに払うと、足を組んで見せる。
「だっ! だから誰がまだ子供のお前を相手にするか! セレブとしての嗜みを言ってるんだ!」
立ち上がりながら赤面し声を上げるシャルギエル。そして動揺を誤魔化す様にパタパタと体中の汚れを手で払いまくる。
「あたい、そんなにまだ子供っぽいかな……。これでも一応もう十歳から生理も来てるし、胸はまだ発育途中で申し分程度だけど、まぁ肉体的にはもうOKだと思うんだけど……」
カノンは自分の胸元を見ながら両手を当てて、何事もないかの如くサラリと口にする。
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