人形の見る夢
人形の見る夢
成人向
発行者:ほおずき
価格:章別決済
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ジャンル:その他

公開開始日:2012/03/05
最終更新日:2015/07/17 11:20

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人形の見る夢 第5章 琥珀
その男性が初めて店に現れたとき、お客にはなりそうにないと思った。複数で来店した客は商品を買わない。そんなジンクスがあった。

「うわ、すげー値段」
「何年ローンだこれ。寿命よりローンの方が長くなるよ」

高いに決まっている。
人形の姿かたちは完全に人間と同じだし、思考もある。
安くては困る。

その男性は三人で来ていた。
興味本位で足を向けた冷やかしなのは間違いなかった。

けれど、その男性は一体の人形の前で唐突に足を止めてガラスケースを覗き込むと怪訝そうな顔をした。

聞こえている…。
あの男性はあの子の声が聞こえている。


『出して、ガラスケースからだして』

人形は琥珀の目と髪をした華奢な体つきの人形だった。
豪華な顔やウサギみたいな奇異な色彩を持った人形も多い中で、整った顔立ちをしながら目立つタイプではないからか、これまで売れ残ってきた子だ。


「人形って喋るのか…」

「当り前だろう。人間と違うところはないというぞ。お前、その人形買うのか」
「買わないよ。そうじゃなくて、」

「だよな。高すぎる。けど、夢だよな。こんな可愛い子はべらせて生活できたらさ」

「もう帰ろう。仕事だ」
「なんだよ。つまらないな」

男性は足早に店を出て行った。
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