告白の行方
第9章 決別の夜
後悔しないように必死で生きているはずなのに、結局は心残りのある生き方をしている自分に腹が立つ。
「何だか、辛いよ……」
誰もいないはずのエントランス。彼女はそっと目を抑え、小さく鼻をすすった。もうすぐ家の中に入る。そうしたら思いっきり泣けると言い聞かせ、今は顔を上げようと思う。と、その時
「長野さん……?」
大きな影が目の前で揺れた。そこにいたのはあの時
“しゃぶれ”
と命じた冷ややかな顔つきの男だった。
どうして彼がここに居るか分からず、言葉を失った里歌に
「この前は楽しんだ様だけど、あのときの刺激が忘れられなくて、今日はほかの男に告白して来たのか?」
彼は軽蔑を込めた口調でそう言った。
それは完全な誤解。いったいどうすればそんな事を考えつくのだろう。里歌は自分が彼にどう思われているかつくづく思い知らされた気がした。それでも
「そんな事、無い」
全てが本気だった。彼だけは特別。あの時の気持ちを言葉に込め、彼を正面から見返した。長野はそんな里歌のつま先から頭のてっぺんまで視線を走らせると
「妊娠でもさせたかと思って、一応心配して来てやったんだが、取り越し苦労か」
と鼻で笑うように言い放った。
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