俺様王子の恋愛街道
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発行者:かぼし冬佳
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2013/02/09
最終更新日:2013/02/09 18:45

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俺様王子の恋愛街道 第2章 第一章、俺様王子と不機嫌の種
「あれ? 殿下ってば、どうしたんです~? うな垂れて」

 軽いノック音の後に、従者のトールが書類の束を抱えて、執務室に入ってきた。
 ウォーレンは顔を上げる。
 頭の高い位置で一つに結った真っ白な髪は、突然変異によるものだと、ウォーレンは聞いていた。女性が夢見る騎士のように、肌は白く、女のようだ。本人に言うと怒るのだが。
 しかし、身体は、決して華奢ではなく、背は高い方で、しなやかな仕草からは想像がつかないほど、鍛え抜かれていた。が、全体的な線は細い。
 ウォーレンの三歳上のくえない従者。
 騎士の普段着である、青空を濃くしたような色の軍服を着ていた。
トールが、自分の執務机に持っていたものを、ドンと音を立てて置き、ウォーレンの方へ歩いてくるのを黙って眺める。

「また、随分な量だな」

「ええ、殿下は仕事が速いからと。はい、陛下からの恋文です」

「あのクソ親父」

 トールの曇り空の瞳が曖昧に弛む。
 ウォーレンは、トールから、一枚の紙を受け取る。
 それは正しくは、ガートン王の従者・スカイからで、一言「お世話をかけます」とあった。

「相変わらず、達筆だな」

 まあ、いいか。と、ウォーレンは呟くと、目の前の壁に気付く。

「ん? なんだよ」

「いいえ? 殿下にも素直なところがあるんですねえ」

 トールは、にこやかな表情を浮かべて、机の上とウォーレンの顔を見比べている。

「何が……」

 トールの視線の先を辿ると、日記帳に行き着いた。慌てて、ウォーレンは日記帳を閉じる。

「別にお前に言われたからじゃないからな」

「わかってますよ~」

 トールの口角が面白そうに上がる。

「殿下の悩みはそこまで深刻だったんですねえ。何て書いたのですか?」

「教えるわけないだろ」

 すると、トールはふふふ、と意味ありげに笑った。

(コイツ、後で覗き見するつもりだな)

「厭ですね~、私にそんな趣味はないですよ」

 東に大きく開け放った窓から、穏やかな風が吹く。真夏のスタッピアは、乾燥していて喉が渇くのだ。ウォーレンの口内は、干からびかけていた。
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