倒錯の螺旋階段
第4章 4章 姐さんと私
「それじゃあ 始めなさい」
凛とした ミチコ姐さんの 声が 響く
モーツアルトの クラリネット協奏曲が CDで 流れ始めてから
ソファに 深く腰を 落ち着けて 煙草を点けて 私を 視る
エレガントな 茶のシルクのブラウスに タイトスカートが
いつものように キリッとして 似合っていた
「はい」 と 私は答えて
姐さんのほうに 脚を拡げて 右手を 前に当てる
クリトリスを 擦って 膣に 中指を 差し込むように
左手は ブラジャーの 上から 乳房を 揉む
テーブルを 寄せて 拡げた リビングの 中央で
キッチンの 肘掛もない 背もたれだけの 椅子に独り座って
下半身は 脱がされて ただ 上は ブラは外すなといわれたから
白いレースの入った ブラジャー以外は 素裸
「それで? 彼と どうなったの?」
ミチコ姐さんの 少し詰問調子な 声になる
怯えながら 自慰を 続けながら
私は T君との 性的行為について 白状する
姐さん と 知り合ったのは 社会人になりかけの頃
先輩に 連れられた 繁華街 裏の レズバーで
それが バーのママと 客の関係を越えて
個人的に 深い関係になって もう10年近いかも
しばらく 会っていなかった
でも いつだって 姐さんは 気まぐれに やってくるんだから
アマデウスを 聴かせながら 私に
眼の前で 自慰をさせるのが 趣味で
おかげで 私は モーツアルトが 聴こえてくると
喫茶店でも 落ち着かなくなる 条件反射のように
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