美珂 ~カウンセラーと少女~
第1章 SIDE-A
【録音開始】
―――あの、先生……。
―――なあに?
―――このこと、絶対に、秘密にしてくださいね。
―――相談者の秘密を守るのはカウンセリングの鉄則よ。そうでなかったら、安心して相談なんてできないでしょ? 心配しなくていいわ。だから、隠し事はしないこと。いいわね。
―――はい。私のお兄ちゃんの事なんですけど……。うちのお兄ちゃん、その、………なんです。
―――なあに? よく聞こえないわ。
―――……ヘンタイ、なんです。
―――ヘンタイ? どうして?
―――私、毎日お兄ちゃんと一緒に電車で通学してるんですけど、電車の中で、私にえっちなコトするんです。
―――誰が?
―――だから、お兄ちゃんがです。
―――チカンされるってこと?
―――そうです。
―――あらあら、電車の中で妹にチカンするなんて困ったお兄さんね。
―――………。
―――でも、チカンと決めつけるのは早いんじゃない? 朝のラッシュの電車なんだから、お兄さんにその気がなくても体や手があなたに触れてしまうこともあるんじゃない?
―――偶然触ってしまったとか、そういうレベルじゃないんです。もう完全に、ワザとやってるんです。
―――うーん……。状況がよく分からないと、私としてはなんとも言えないわね。もうちょっと具体的にお話して。
―――………お兄ちゃんは、電車に乗ると必ず私の後ろに立つんです。
―――こんな風に?
―――はい。
―――ほら、あなたも立って。
―――え? でも……。
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