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夕飯後から就寝までは執筆時間。
デイトレードもアニメも無いから、自動的にする事が執筆しか無い。
称号を【神速のノリ】に変更して原稿用紙に向かう。
「退屈かもしれんけど、ごめんね。良かったら読んでみて」
途中まではパソコンで書いてた応募作は、そこまで原稿用紙になってる。
ネット環境はないからweb小説は、今から書く分しか読めないという中途半端状態やけど。
「はい☆ ノリ様は書物をお書きになるのですわね。凄いですわ」
「うーん、原稿料の安い下っ端やけどね」
暫くの静寂の中、時々お彩さんがクスクスと笑う。
執筆を進めていると、今ある原稿を読み終わったのか、お彩さんが原稿を覗き込んでいた。
「ちょい休憩しよか」
「はい☆ ノリ様の書は突飛な事が多くてドキドキしますわ。今、お茶をお持ち致しますわね」
「ありがとう」
二人で静かなティータイム。
肩が凝ったんで、腕を回したり、手揉みしてると、
「肩が痛みますの? わたくし、お父様によく指圧をしておりましたから、お任せ下さい☆」
「ん‥‥ありがと。頼もかな」
胡座(あぐら)のまま、お彩さんに背中を任せる。
「おー、効く効く。お彩さんみたいに綺麗な人にしてもらうと嬉し恥ずかしやな」
「クスクス、そう言ってもらえると、やり甲斐がありますわ☆」
肩の血行がよくなってくると、腰や手足も凝ってるのが分かる。
ペインコントロールってヤツやな。
脳に近い部分に痛みがあると、他の部分の痛みは、あまり感じない。
逆に、それ以上の痛みが発生すると、肩の痛みより、そっちが優先される。
例えば、太ももを抓(つね)って、痛いと肩の痛みは感じなくなるんや。
肩を揉んでもらいながら、腰に手をやると、
「腰も痛むんですの?」
「まあ、腰ってか結構全身。運動して執筆もしたからね」
「お布団に横になって下さいませ。全身指圧致しますわ」
「お言葉に甘えよかな。ありがとう」
ベッドに、うつ伏せになると、お彩さんが全身を指圧してくれる。
「はぁ~、気持ちいい」
「ふふふ、これも花嫁修業の一環ですのよ」
気持ち良すぎて意識が薄れていく。
*
「はっ‥‥お彩さん!?」
「はい、お傍におりますわよ」
近い。
これは、仰向けで膝枕されてるのでは!?
そして、お彩さんは優しく髪を撫でてくれている。
「気持ちよくて寝てもうたわ。お彩さんは疲れてへん?」
「わたくしは、ノリ様と共に居られれば幸せで、疲れなど感じませんわ☆///」
二人して赤面する。
懐中時計を開く。
20時半か‥‥寝るには少し早いし、執筆するには短い。
「もう少し、このままで居てもいい?」
「はい☆」
あー、なんやろ。
こんなに幸せな気分になったんは初めてな気がする。
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「そろそろ寝よか。今日は左右入れ替えて手を繋ごう」
「はい☆」
オレもアラサーの独身男、お彩さんに襲いかかりたい衝動もある。
でも、お彩さんを傷つけるのは嫌やしな。
いずれは自然な形で‥‥。
そんな事を思いつつ、眠りについた。