雪天使~お前に捧ぐカノン~
第3章 act,2:出会い
「で、金欲しさにここらのガキはそのSCCを出入りする大人に媚び得る小銭稼ぎをしているが、何せあそこは何でも有りの世界だからな。俗に外のスラムが世間で言うアンダーワールドなら、貴族御用達なるSCCこそがとんでもねえアンダーグラウンドって言う真実だ。だからそこで自ら進んで働くガキにゃあ大概未来はねえが、馬鹿だからそんな事分かんねえのさ。しかし利口なガキはそれを知ってるから、逆にSCCの奴らを上手く利用する。そうゆうガキこそがグループのボスやリーダーになれるのさ。Rやエリートみてえにな」
「……Rとエリート……?」
最後の名前に反応したシャルギエルは、思わずオウム返しする。
「何だ。もう奴等の名前知ってんのか」
「知ってるも何も、ここに来る前に立ち寄った下町カジノにウエイターと客としていたよ」
その言葉を聞いて男は目を丸くするや否や、ため息と共に両手を上げてサッと手の平を下へ払う仕草を見せて重々しい口調で言った。
「……だったら余計に十分気を付けな。奴らに会って生きるか死ぬかはお前の運次第だ」
「え?」
「ボケッとしてねえでとっととそのバイクをSCCのパーキングに駐輪しろ! 少なくともそのメーカーのバイクだけでもあそこなら守られる。そうしねえと盗まれちまうぜ。そしてもし万が一この町でお前が目をつけたり狙われる側になってヤバくなったら、ひとまずSCCに自分の会員登録をしろ。お前が運のあるお坊ちゃんならその店から“ひとまず”安全は保障され、誰にも手出しをされなくなる筈だ。それでも会員を信用して気を許すな。何せあそこは表から隠されたアングラ世界。富豪の肩書きを盾にした伏魔殿だ。常に気を張って自分を見失うなよ。それが俺から言える長生きのコツだ」
「そのSCCって……」
「いいから早くその目立つバイクだけでも隠して自分の上流身分をこの町では誤魔化せ! でなきゃ亡者の餌食だ。例の店はこの先行きゃあすぐ分かる! 分かったらサッサと行け!」
怒鳴られてシャルギエルは、困惑しつつもバイクを走らせた。
17