空は朝から青く澄み渡っていた。五月の風が時折、グラウンドを吹き抜け、
校庭の片隅に掲げられた校旗を揺らしていた。
高校のグラウンドには競技用のトラックを囲むようにテントが設置され、
およそ千人の全校生徒が運動場を埋め尽くしていた。
今日は、毎年五月の中旬に開催される年に一度の高校の運動会が行われる日だった。
新年度が始まってまだまもない時期に、新しい環境に慣れていない生徒達が初めて一体感を味わえる運動会は、
学校行事の中でも最も盛り上がるイベントの一つになっていた。
生徒達は皆、意気揚々とした顔で競技に参加するクラスメートを応援し、互いの健闘を称え、励まし合いながら、
運動会は競技種目が進むごとにだんだん盛り上がりを見せ始めていた。
グラウンドの応援席の一角に、ひと際目立つ美しい女性の姿があった。高校生にはない大人の色香を放つその彼女は、
今年から一年B組の担任を任せられている秋山玲奈という、教師になってまだ三年目の二十五歳の女性教師だった。
玲奈が教師になってから赴任したこの私立高校は、全校生徒数およそ千人の中高一貫の共学校で
県内でも有数の進学校であった。
そのため文武両立した真面目で優秀な生徒も多く、玲奈は教師として毎日新鮮な刺激を受ける日々を過ごしていた。
玲奈は、教職員の中でも一番若く生徒達と年齢も近かった事から、生徒達からの人気も高かった。
特に男子生徒は、玲奈の大人の色香を漂わせた圧倒的な美貌に心奪われている者が多く、
玲奈は彼らのアイドル的存在になっていた。
一方、女子生徒の一部には、そんな男子の注目を一身に浴びる玲奈の事を快く思わない生徒達がいるのも
また事実だった。