それから一週間後。
俺はふと閃いた。
岩「なぁなぁ。」
❀「ん?」
岩「お前さ、まだ仕事決まんないなら俺の仕事手伝う?」
❀「え、何それ。」
岩「マネージャー補佐っていうか付き人っていうか、なんかそんな感じの。」
❀「剛典の付き人!?何それ!面白い!w」
岩「次の仕事見つかるまでのちょっとしたバイト程度にはなるかも。」
❀「やりたーーい!」
今ちょうど俺の周り、人手不足だし。
岩「あ、マネージャーにメールしてみたらぜひぜひ今日から連れておいで、だって。」
❀「いいの?!行くーーー!!」
❀❀は大喜びで出かける準備を始めた。
❀「張り切って働いちゃうもんねー!見ってろぉ〜〜!」
岩「ぶはははw」
この間、俺の職場見たいとか言ってくれてたし、丁度いいよな。
岩「おはようございまーす。」
❀「おはようございます!!!」
岩「ぶっ、声でけぇ!w」
❀「なんでよ!挨拶は基本でしょ?!」
男「あははは、初めまして、❀❀ちゃんだよね?岩ちゃんから聞いてます。」
❀「よろしくお願いします!!!」
迎えにきたマネージャーが笑顔で挨拶すると、❀❀も嬉しそうに頭を下げた。
❀「右も左もわからないど素人ですが、なんでも命じてください!どうぞよろしくお願いします!」
男「あっははは!岩ちゃんはね、いっちばん忙しいから。猫の手も借りたいくらいなんだよ。ほんと助かります。ありがとうね。」
それから現場に入ると、❀❀はすぐに俺から離れて、マネージャーの指示を受けながらテキパキと働き始めた。
男「いやー、彼女フットワークが軽くてすごくいいよ、助かる!」
岩「あ、ほんと?」
男「うん。」
周りの評判もなかなかで。
岩「次は移動して臣さんと隆二さんと撮影ね。」
❀「三人だけ?」
岩「うん、今回はね。」
❀「はーい!」
❀❀は楽しそうに笑って車に乗り込んだ。
岩「どう?」
❀「楽しい!もっと仕事したい!」
岩「そりゃ良かったw」
❀「ずっと休んでたから身体なまってるんだもん!」
岩「じゃあいっぱい働いてくださいw」
❀「任せてー!w」
嬉しそうな❀❀を見て、連れてきて良かったなって思ったのも束の間。
それが「やっぱりやめときゃ良かった…」に変わったのは、臣さんが予想外に❀❀に食いついたから。
臣「え、この子が言ってた子?めっちゃ可愛いじゃん!!」
❀❀が初めましてって挨拶すると、臣さんも隆二さんもなぜか目を輝かせて。
臣さんにいたってはずーっと❀❀にちょっかい出して話しかけてる。
臣「ねぇねぇ一緒に住んでるんでしょ?幼馴染なんでしょ?」
❀「はいそうです。」
臣「マジで可愛いね?よく言われない?」
❀「言われません。」
臣「うっそだーーw」
❀「ほんとです。」
臣「彼氏いんの?」
❀「いません。」
臣「俺なんてどう?」
❀「……やです。」
臣「なんでよ?!w」
❀「なんかヤリ捨てされそう…。」
臣「ぶっ!面白いね❀❀ちゃん!あははは!ww」
臣さんが❀❀を気に入ったのは一目瞭然で、そのせいでマネージャーも❀❀に仕事を頼みにくくなって放置状態。
隆「ねぇねぇ、岩ちゃんとはほんとにただの幼馴染なの?」
臣「それ俺も聞きたかったー!」
❀「……。」
隆「一回くらい男女の関係に…、」
❀「ないですよ、ないない、絶対ないですw」
臣「岩ちゃんと同じこと言ってる。」
❀「え…?」
ふと俺を見た❀❀に、俺は笑いかけた。
岩「なぁ?あるわけないよな?」
❀「うん。だってあたし達、親友だもんね!」
隆「親友なんだ!いいなー。俺親友とまで言える女友達いないわー。」
岩「こいつは幼馴染だから特別ですよ。」
❀「あたしも。剛典が特別なだけ。」
臣「そんなにお互いに特別なのに、恋愛感情にはならないの?」
❀「ならないですって!w」
しつこい臣さんを、❀❀は軽快に笑い飛ばした。
臣「てかさ、彼氏いないならほんとにどう?俺。」
隆「臣、粘るねぇw」
臣「だってタイプなんだもん、❀❀ちゃんw」
岩「タイプなんすか?!」
臣「うん。可愛いじゃん。ダメ?」
岩「……っ」
正直、女に不自由してない臣さんが❀❀をここまで気に入るとか、予想外すぎて。
臣「岩ちゃんちなんてやめて、俺んち来たら?w」
❀「えっ…」
臣「毎日可愛がってあげるよー?」
隆「臣、顔がやらしい。」
臣「だってやらしいことしか考えてないもんw」
❀「こらーー!w」
臣「ね、おいでよ、うち。」
❀「もう、面白がってからかうのやめてください。」
岩「そうですよ。こいつあんまり男に免疫ないんだから。」
臣「え、そうなの?なんで?」
なんで?と聞かれると、なんでだろ。
俺もよくわかんないけど。
岩「今まで彼氏いたことないから?」
臣「うっそ!マジで!?この歳で?!」
岩「……あ。」
余計なことバラしやがって…
って顔で❀❀が俺を睨んでる。
臣「こんな可愛いんだから男がほっとかないでしょ!」
隆「そうだよ!なんで彼氏作んなかったの?」
❀「まぁ…それは…、ちょっと…ワケありでして…///」
ん…?
ワケあり…?
そんなん俺、初めて聞いたぞ?
なんでちょっと照れてんだ?
岩「大学ん時も、何人か告白してきたのにお前全部断ってたもんな?」
隆「えーーなにそれ!理想がめっちゃ高いとか?」
❀「ええと…、、」
臣「無駄に岩ちゃんと幼馴染なせいで、見る目肥えちゃってんじゃん?」
隆「そっか!こんなイケメンがそばにいるせいで!岩ちゃんのせいだ!」
岩「はぁぁ!?」
なぜか❀❀が彼氏いたことないことを俺のせいにされたけど。
告白してきた奴の中にはイケメンもいたはずなんだけどな。
でも「付き合ってみればいいのに」って俺が言っても「うるさい」って怒られて終わるんだよ、いっつも。
恋愛に疎いというかなんというか。
隆「ちなみに岩ちゃんの大学時代はどんなんだったの?」
❀「今と変わんないですよ。女取っ替え引っ替えのチャラ男です。」
岩「こら!!w」
そう、❀❀はいつもそう言うんだ、俺のこと。
まぁ俺も❀❀には包み隠さずなんでも話してるせいなんだけど。
❀「女の子なら誰でもいいんだもんね〜?剛典は。」
岩「それは語弊があるぞw」
臣「俺は❀❀ちゃんがいいな。」
❀「へ?」
臣「いいね、そのすっとぼけた返事も。面白いわ〜〜w」
岩「……。」
臣さんがこんなにしつこく口説くなんて。初めてかも。
そういえば最近、自分になびかない女の方がいいとか言ってたっけ。
臣「今度デートしようよ。」
❀「え、しません。」
臣「即答かい!w」
❀「あたしなんかとデートしても楽しくないですよ。」
臣「大丈夫、そこは問題ないから。ご飯だけでもいいから行こうよw」
❀「やです。」
臣「ぶっw」
隆「臣ことごとくフラれてんじゃんw」
臣「いやーー、好きだわ❀❀ちゃんw」
岩「……。」
どこまで本気でどこまで冗談なのかわかんないけど…
臣さんが❀❀を好きだとか連呼してベタベタ触ってるのを見ると、なんかいい気はしなくて。
臣さんと現場が一緒の時はもう連れてきたくないなー、なんて思ったりした。
岩「❀❀先に送ってやって。」
男「了解。」
❀「あれ、剛典は?」
岩「俺は今日会食。」
❀「そうなんだ、遅いの?」
岩「うん、先に寝てていいよ。」
❀「わかったー。」
帰りの車の中、なんだかんだで❀❀は今日楽しかったみたいで、連れてってくれてありがとうってニッコリ笑った後、俺の肩でスヤスヤスヤ。
男「寝ちゃったんだ、❀❀ちゃん!w」
岩「うん、疲れたのかなw」
結局あの後、俺が❀❀を臣さんから引き離して、仕事させたから。
岩「ほら、着いたぞ。起きろー。」
❀「むにゃ…、」
岩「じゃあな。」
❀「うん、行ってらっしゃーい。」
❀❀はむにむにと俺を見送って、マンションの中に入っていった。
岩「大丈夫かなw」
男「なんかあのまま寝ちゃいそうだねw」
岩「うんw」
それから俺は予定通り会食へ。
会食は二時間くらいで終わって、それからまっすぐ帰ろうと思ったんだけど。
「❀❀ちゃんのLINE教えて!」
臣さんから届いたメッセージになんとなくモヤモヤして。
結局家に帰るのはやめて、セフレの家に泊まりに行った。
臣さんのことはスルーして。
女「やーん岩ちゃん久しぶりーー♡」
岩「うんw」
女「最近ぜんぜん来てくれないんだもぉーん!」
岩「ごめんね、忙しくて。」
女「あんっ、もう…するの?///」
岩「早く抱きたい。ダメ?」
女「んもぅ…、いいよ?♡」
彼女は嬉しそうに俺の背中に手を回して。
キスをしたまま雪崩れ込むように寝室に入った。
❀❀がうちに来てから禁欲生活が続いてたから、久々の生身の身体に、すげぇ興奮する。
やっぱ女の身体っていいよな、最高。
女「やん、激しいっ、///」
岩「好きなくせに、こーゆーのw」
女「あん、エッチ、///」
恥じらうフリをしながらどんどん乱れていくエロい身体。
女「あんっ、あぁっ、あぁっ、あぁんっ!///」
岩「……はぁ、っ」
何も考えずに夢中で腰を振って、快楽に溺れるだけの時間。
ああ、すげぇ気持ちぃや…。
女「あっ、気持ちぃっ、…あ、あ、…イッちゃうぅぅ!///」
結局俺はその夜、立て続けに二回ぶっ放して、そのまま眠った。
翌朝、「また遊びに来てね♡」なんて抱きついてくる彼女にキスで応えながら…
同じ身体を抱いたって飽きるだけだから次は違う子がいいなーなんて思いながら帰りのタクシーに乗り込んだ。
岩「ただいまー。」
❀「……おかえり。」
岩「今日はどうする?一緒に行く?」
❀「今日は友達と約束してるから行かない。」
岩「そっか。」
その答えに少しほっとした。
今日も臣さんと隆二さんと三人での仕事だから。
❀「どこ行ってたの…?」
岩「へ?」
❀「朝帰り。」
岩「ああ、友達と朝まで飲んでた!」
❀「……女だな?」
岩「は?!w」
なんでソッコーでバレんだ俺はw
❀「セフレのとこにでも行ってたんでしょ。」
岩「違うって!あ、マネージャー下着いたみたい。行くわ、じゃ!」
❀「……行ってらっしゃい。」
なんつーか。
別に嘘つかなくてもいいんだけど。
❀❀は俺のダメダメな私生活なんて知り尽くしてんだけど。
なぜか一緒に暮らしてると、ついさっきまでセフレのとこにいました、っていうのはなんか少し生々しすぎて。
俺は初めて❀❀に嘘をついた。
ま、秒でバレたけどねw
臣「おい。なんでシカトしてんだ岩田。」
岩「え?w」
臣「❀❀ちゃんのLINE教えろってメールしたじゃん!」
岩「あれ、そうでしたっけ?w」
臣「早く教えろ!」
現場に着くなり、臣さんに詰め寄られる俺。
岩「じゃあ本人に確認してからにしますわ。」
臣「いいじゃんそんなの!教えてよ!」
隆「どうしたの臣、いつになくしつけーじゃん。そんなに❀❀ちゃん気に入った?」
臣「気に入った!」
岩「……っ」
そう断言する臣さんに、またモヤモヤした気持ちになる。
臣「あんな可愛いなんて聞いてないよ岩ちゃん。」
岩「そうですか?別に普通じゃないっすか?」
臣「めちゃめちゃ可愛いっつーの!スタイルもいいし。」
隆「そこまで見てたの?w」
臣「見るに決まってんだろ。」
隆「おっぱい大きいのは見た。」
臣「お前も見てんじゃん!w」
隆「おっぱいは見るでしょ!」
臣「俺は全部見たっつーの。なんかすげぇ柔らかそうで触りたくなる身体してんだよなーあの子。」
岩「……。」
なんだろう。
俺はそんな目であいつを見たことがないせいだろうか。
そんな風に言われると、不快感を感じる。
モヤモヤムカムカしてくる。
臣「あんなエロい身体と一緒に寝てて、よく岩ちゃん平気でいられんね。信じらんないわw」
岩「……。」
隆「でも臣、まったく相手にされてなかったじゃん、❀❀ちゃんに。」
臣「だからそこがいいんじゃんw」
隆「ドMかw」
臣「落とし甲斐があるw」
隆「ヤリ捨てされそうとか言われてたじゃん。イメージ最悪じゃんw」
臣「笑ってんじゃねぇよ!w」
隆「てかあの子、彼氏いたことないならバージンてこと??」
岩「そうじゃないっすかね…。」
臣「うおおおお!燃える!!w」
隆「臣に初めてを食われるのはちょっとかわいそう…。」
臣「なんでだよ!w」
岩「……。」
それは俺もちょっとやだ。
つーかなんでこんなモヤモヤすんだろ。
よくわかんねぇや。
わかんねぇけど、臣さんたちと❀❀の話はあんましたくない。
男「岩ちゃーん!次の撮影向かうよー!」
岩「はーい!」
やっと二人と分かれて一人の仕事に向かってほっとしてたら…、、
「❀❀ちゃんのLINE教えろっつーの!」
って、まーた臣さんからメールが来てて。
岩「はぁ…。」
もちろんスルーしたけど、なんかどうもむしゃくしゃする俺は、仕事終わりにまたセフレの家に遊びに行った。
昨日とは違う女の子。
女「やーん、岩ちゃん久しぶりーー♡」
岩「うん…。」
女「来てくれて嬉しい、ね、上がって上がってー♡」
岩「……。」
女「んんっ!?///」
俺は玄関ですぐさま彼女の口を塞いだ。
女「岩ちゃ…?!」
岩「うるさい、黙って。」
女「////」
最初は抵抗を見せた彼女も、キスを続ければあっという間に大人しくなって、俺に身体を開いていく。
女「ここで…するの?///」
岩「待てない。抱かせて。」
女「あっ…♡」
どこでもいいんだ、ヤる場所なんて。
女「あぁんっ!あぁ…っあぁぁ!///」
玄関に響く彼女の嬌声は、卑猥で、淫らで。
俺はバックでぶち込んだ後、そのままベッドに連れていって二回戦に突入した。
ああ、女の上で腰を振ってる時が一番気持ちイイ。
何も考えずにただ快楽に溺れるだけ。
相手が誰だろうとどうでもいいんだ。
“あんなエロい身体と一緒に寝てて、よく岩ちゃん平気でいられんね”
臣さんの言葉を思い出して、またムカムカした。
女「やっ、激しいよ岩ちゃん…ッ、あぁんッ!///」
うるせぇよ、黙って喘いでろ。
女「いやぁんっ!壊れちゃうっ!あぁんっ!///」
むしゃくしゃする気持ちと一緒に欲を全部吐き出してスッキリした俺は、そのまま朝まで眠った。
女「ね、岩ちゃん昨夜すっごく激しかったぁ♡」
朝起きると、女がうっとりと俺にしなだれかかってきて。
岩「満足してもらえた?w」
女「うん、サイコー♡♡」
嬉しそうに笑う彼女が今度は俺の上に乗ってきて、三回戦開始。
その後すぐにシャワーを浴びて家に帰ったら、また❀❀がジロリと俺を睨んできた。
❀「おかえり…。」
岩「ただいま。なーに怖い顔してんの?w」
❀「また女遊び?」
岩「……。」
うーん、こいつには嘘ついてもすぐバレちゃうからな。
ここは開き直っとくか!
岩「そ!ほら、お前いるからここには連れこめねぇじゃん?w」
❀「……っ」
岩「だから俺がお泊まりしてきたわけー。」
❀「昨日と…同じ家…?」
岩「違うよ。別の子。」
❀「ふーーーん…。」
あれ?今の「ふーん」、めっちゃ冷たくなかった?
俺の女遊びなんて今に始まったことじゃないのに。
岩「あ、わかったー。俺がいなくて寂しかったんだろぉー?w」
❀「……っ」
岩「よしよし、拗ねるなってーw」
❀「触んないで!!!」
バシッ!
岩「は…?」
思いきり手を払いのけられてカチンときた俺は思わず声が低くなった。
❀「ほんと女取っ替え引っ替えして、昔からそうだもんね、剛典は!」
岩「なんだよ、悪ぃかよ。」
❀「彼女いても平気で浮気するし!」
岩「そうだよ。俺そーゆー奴だもん。でも今は彼女いないんだから別にいいじゃん。」
なんでお前にそんなこと言われなきゃなんないわけ?
なんかムカつくんですけど。
❀「女なら誰でもいいんでしょ?節操なし!」
岩「はぁ?俺だって一応相手は選んでるわ!お前は彼氏いたこともねーからわかんねぇんだろ!」
❀「はぁぁ!?バカにしないでよ!」
岩「ストレス発散に女とヤリたくなる時があんだよ!ヤッてスッキリすんの!そういう男の事情、お前にはわかんねぇだろ!」
❀「そんなんわかりたくもないし!バカ剛典!!」
なんでこんな言い合いになってんだっけ…?
売り言葉に買い言葉で、険悪な雰囲気が部屋に漂う。
岩「今日もどっか泊まってくっから。帰んねぇわ。」
❀「あっそ!好きにしろ!一生帰ってくんな!」
ああ〜〜〜〜ムカつく。
ここは俺んちだっつーの!!
バタン!!
俺はそのまま家を出て、迎えの車に乗り込んだ。