それから❀❀はほんとに毎日仕事に来てくれて。
週末の特番収録で、7人が揃う現場に初めて顔を出すことになった。
男「❀❀ちゃん、こっちお願い!」
❀「はーい!」
マネージャーとも阿吽の呼吸になってきたし、なんか馴染んできたなw
健「あれが噂の岩ちゃんの幼馴染か?」
岩「はい。」
臣「あ、健ちゃん、ダメだよ。俺が狙ってんだから。」
健「ええ?!」
臣「やーっと会えた。今日こそLINE聞く。岩ちゃん全然教えてくんねぇから。」
岩「はははw」
臣さんの恨みがましい視線をスルーして書類チェックをしてると、直人さんと隆二さんが入ってきたのがわかった。
隆「あ!❀❀ちゃん!」
❀「おはようございます。」
直「え、誰…?」
隆「ほら、前に言ってた岩ちゃんの幼馴染の女の子です。」
そんなやりとりに手を止めて顔を上げると…
岩「……っ」
そこには❀❀に見とれて固まってるような、直人さんの姿があった。
直「え、…めっちゃ…可愛いじゃん///」
隆「そうなんすよ!」
直「初めまして、直人です///」
❀「初めまして、❀❀です!よろしくお願いします。」
直「うん///」
……珍しいな。
直人さんがすげぇ照れてる。
❀❀は普通に握手してすぐ仕事に戻っていったけど。
臣「あー!❀❀ちゃん行っちゃった!くっそー!」
直「え、どーゆーこと?」
隆「臣、今❀❀ちゃんのこと狙ってんすよ。」
直「え、マジで?!」
臣「はい。」
直「俺も狙いたい…。つーかマジでタイプ///」
隆「おおお!」
直「めっちゃ可愛いじゃん…何アレ…///」
健「普通に一回ヤリたいレベルではあるw」
隆「おっぱい大きいしね。」
臣「だからおっぱいだけじゃねぇんだって!」
直「え、お前もう食ったの!?」
臣「まだですよ!これからです。」
隆「臣、フラれっぱなしのくせにこれから食う宣言w」
直「えーー、俺もマジでいきたいかも///」
健「臣ちゃんvs直人さんやん!w」
岩「……。」
盛り上がってるみんなの隣で、俺は少し複雑な気分…。
なんで…?
❀❀ってこんなに男ウケ良かった…?
そりゃ大学の時も告られたりしてたのは知ってたけど…、、
臣さんだけじゃなく、直人さんまで。
岩「本気ですか…?」
臣「本気だよ!本気で食いたい!」
直「岩ちゃん、目腐ってんの?w」
岩「え…っ」
直「あの子相当可愛いよ?スタイルもいいし。絶対モテるでしょ。」
岩「……。」
そうなんだろうか…。
健「ほんまは岩ちゃんも好きやったりしてぇ〜w」
岩「ないっすよ、w」
健二郎さんに肩を組まれて冷やかされたけど。
俺と❀❀は絶対にない。
岩「ほんと妹みたいなんですよ、あいつは。家族ぐるみで仲良いし。うち男しかいないから、おふくろも❀❀ちゃんみたいな女の子が欲しかったわぁ〜!とかよく言ってて。」
臣「へぇ、そうなんだ。」
直「幼馴染だとあんな可愛い子でもそういう対象に見えないもんなの?」
岩「見たことないっす。」
臣「ふーん、もったいねぇw」
岩「……。」
むしろみんながこんなに❀❀に食いつくことに、驚きなんだけど。
臣「俺は1ヶ月以内に絶対落とす!絶対食う!w」
隆「臣、ガチじゃんw」
直「俺もちょっと近付いてみちゃおうっと。」
健「俺も仲良くなれへんかなぁ。」
臣「健ちゃんはいいって!w」
隆「それなら俺だってもっと仲良くなりたい。」
臣「なんでだよ!w」
隆「もしかしたら俺にも可能性あるかもしんないじゃん。」
直「なんだよ、みんな狙ってんじゃん!w」
岩「……。」
やっぱ俺の付き人させんのやめようかな…。
なんかすげぇ嫌だ。
またモヤモヤする。
みんなに❀❀を会わせたくない。
❀「ね、剛典ーーー!」
岩「……っ」
❀「なんかやることある?あっちの仕事終わったからマネージャーが剛典に声かけてみて、って。」
岩「……別に。なんもないよ。あっち行ってろ。」
❀「はぁ?何その言い方ー!」
臣「ねぇ、❀❀ちゃん!」
❀「あ、おはようございます。」
臣「今日こそLINE教えて!」
❀「え?」
臣「交換しよ!」
ほら、こういうことになる。
❀「すいません、仕事中なんで。」
臣「今、手ぇ空いてんでしょ?いいじゃん!」
❀「空いてません!ほら!」
岩「……っ」
❀❀はいきなり俺の肩を揉み始めた。
❀「剛典のマッサージで忙しいです。」
臣「なんだよそれ!w」
こんな蔑ろにされてんのに臣さんは面白そうにゲラゲラ笑ってるし。
この人Mだったっけ?
それともなかなか落ちない女が珍しいからしつこいだけ?
臣「❀❀ちゃんの携帯はー、あ、あった。」
❀「ちょっと!」
臣「いってぇぇぇ!!」
岩「……っ」
臣さんは両手が塞がってる❀❀のポケットに手を入れて携帯を取ろうとして、❀❀に思いっきり足を踏まれた。
臣「何すんだよ!w」
❀「そっちこそ何すんですか!セクハラですよ!」
臣「思いっきり踏んだだろ、今!」
❀「ええ。」
臣「この靴…高かったのに…。」
❀「知りません。」
隆「……ぷぷ、❀❀ちゃん最高…w」
健「臣ちゃんざんねーーん!w」
臣「くっそーーーー」
とか言いながらも、やっぱり臣さんは嬉しそうに笑ってる。
隆「❀❀ちゃん、ほんとに臣に興味ないんだねw」
❀「え?」
隆「アプローチをことごくスルーw」
臣「なんで?俺のどこがダメ?」
❀「……。」
❀❀は俺の肩で手を止めて、しばらく考え込んだ。
❀「……どこがダメかわらかないほど、興味ないです、ごめんなさい。」
岩「ぶっw」
その答えにはさすがに俺も笑っちゃった。
もちろんみんなも大爆笑。
臣「言っとくけど俺諦めないから。」
❀「えーーー。」
臣「こんなに手応えないの初めてだわw」
❀「私もこんなにしつこい人初めてです。」
❀❀はすっげぇ迷惑そうに返事したw
直「ねぇ❀❀ちゃん、岩ちゃんのマッサージ終わったらちょっとこっちおいでー。」
❀「え?あ、はい!わかりました!」
岩「……っ」
今度は直人さん。
なんだろう。
❀「仕事かな?行ってくるね。」
岩「ああ、うん。」
直人さんが❀❀に仕事を頼むなんておかしい。
❀❀は俺の付き人として来てるんだから。
きっと直人さんのことだから言葉巧みに連絡先とか交換する気だろう。
岩「……。」
俺は二人の様子が気になって、書類チェックを続けながらチラチラと横目で見ていた。
直「❀❀ちゃんさぁ、」
何を話してるのか、ハッキリ聞こえないけど…、
岩「……っ!」
直人さんが❀❀の耳元に唇を寄せて、何か言った途端、❀❀の顔が真っ赤になった。
……なんだアレ。
直「くくく…、❀❀ちゃん可愛いねぇ?w」
❀「////」
なんだ?
なんて言った?
なんで❀❀は真っ赤になってんだ?
岩「……っ」
……ダメだ。仕事が手につかない。
❀❀のあんな顔、初めて見た。
あいつも…男の前であんな顔…するんだ…。
あ、❀❀も直人さんの耳元でコソコソと何か喋ってる。
直「あはははっw」
❀「もう、///」
直「ほんと可愛い、❀❀ちゃんw」
❀「////」
直人さんは嬉しそうに❀❀の頭を撫でていて…
❀❀は真っ赤になってもじもじしたまま。
なんだよ。
なんなんだよ。
岩「……。」
俺は見たこともない❀❀の姿に、明らかに動揺していた。
岩「今日…さ、」
❀「うん?」
岩「直人さんと何喋ってたの…?」
❀「えっ///」
帰って来て、いつもと同じベッドの中。
俺の質問に、❀❀が口ごもった。
岩「なんか喋ってたじゃん。」
答えない❀❀の顔を覗くと…
❀「////」
また真っ赤になってる❀❀がそこにいた。
岩「……っ」
なんで?
なんなんだよ?
❀「別に…なんでもないよ///」
岩「……っ」
なんでもないのにそんな赤くなるわけ?
もじもじ照れるわけ?
絶対なんかあっただろ。
❀「直人さんって…優しいよね///」
岩「は…?」
まさか…、意識してる…?
❀「はぁ、もう…この話はおしまい!///」
岩「……っ」
❀❀は赤くなってる自分の顔を隠すように、布団を目の上まで引っ張り上げた。
❀「おやすみ!///」
岩「……今日は…湯たんぽいらねぇの?」
いつもは❀❀から抱きついて足乗っけてくるくせに。
❀「うーん…今日はいいや///」
岩「……っ」
なんかその答えがムカついて。
❀「きゃっ!///」
俺は無理やり❀❀を抱きしめた。
岩「この方があったまんの早いんだろ。」
❀「…そう…だけど…、」
岩「おやすみ。」
❀「……おやすみ…なさい。」
それから❀❀はいつも通り、割とすぐに寝息を立てたけど…
……なんでだ?
なんで俺は寝れない?
“なんかすげぇ柔らかそうで触りたくなる身体してんだよなーあの子。”
また臣さんの言葉を思い出した。
……確かに…、❀❀の身体は…すげぇ柔らかいけど…、、
“あんなエロい身体と一緒に寝てて、よく岩ちゃん平気でいられんね。信じらんないわ”
岩「////」
あれ?!
嘘だろ!?
なんで俺、勃ってんの?!!
❀「……ん…、」
岩「……っ///」
別に…、❀❀がこうして抱きついてくることなんて、日常茶飯事で。
こんなの、慣れてるはずなのに。
なんで俺は今日に限って❀❀を意識してんだよ?
岩「////」
……ヤバイ…。
マジで勃起がおさまんない。
嘘だろ…。
こいつのこと、女としてなんて、見たことなかったのに。
俺の身体は今、確かに❀❀を女として意識して、反応してる。
……信じらんねぇ///
きっとみんなのせいだ。
みんながあまりにエロい目で❀❀を見るから。
そのせいで、俺までこんなことに…。
岩「はぁぁ…///」
気のせいだ。気のせいだ。
俺は必死に自分にそう言い聞かせて、無理やり目を閉じた。
❀「剛典、朝ごはんできたよーー。」
岩「…ん……?」
ぼんやりとした頭で、ゆっくり瞼を持ち上げると…
岩「……うわぁ!///」
❀「え?どうしたの?」
岩「////」
びっくした。
岩「なんでもない!///」
俺は自分の動揺を悟られまいと、そのまま顔を洗いに行った。
……はぁ///
❀❀があんな格好で家ん中うろついてんのも。たまに谷間が見えてんのも、別に今日始まったことじゃないのに。
さっきはいきなり目の前におっぱいがあって変な声出しちゃった。
岩「////」
一晩寝たら治るかと思ってたのに、……ダメだ。
やっぱり俺、意識しちゃってる。
❀「いつまで歯磨いてんのぉー?早く食べようよー。」
岩「お、おう、今行く!///」
つーか…
もう一枚くらいなんか着ろっつーの…。
目のやり場が…、
❀「今日は晩御飯、一緒に食べれるー?」
岩「ああ、うん。会食もないし帰ってくるよ。」
❀「おっけー!じゃあ二人分作っとくね♡」
岩「ありがと。」
美味しい朝食を食べながら、目の前にはニッコリ笑う❀❀がいて。
別になんてことない。
いつも通りの朝だ。
変に意識するな!しっかりしろ、俺!
岩「じゃあ行って来ます。」
❀「うん、行ってらっしゃーい♡」
岩「……///」
バタン。
……なんだろ、この変な感じ。
あいつ…もし彼氏ができたら…
こんな風に毎日飯作ってやって…こんな風に毎日可愛く見送ってやったりとか…すんのかな。
そうなったら…俺んちからは出て行くんだよな。
つーか別に彼氏が出来なくたって、水漏れの件が解決したら自分の家に戻るんだし。
あくまで今の暮らしは仮初めなんだ。
隆「あ、岩ちゃんおはよー。」
臣「あれ、今日は❀❀ちゃんは?いねぇの!?」
岩「いないっすよ。」
臣「えええ〜〜〜〜!!」
今日も7人で一緒の仕事だけど、❀❀は友達と約束があるからって今日は来なかった。
そのことに俺はほっとしてたんだ。
臣「あ〜〜、もう!あのおっぱい触りたい!」
岩「やめてくださいよ、もう。」
臣「え?」
そうやってみんなが変な話ばっかりするから、俺までおかしくなるんだ。
あいつを女として意識しちゃうなんて。
岩「別に大したことないっすよ、あいつのおっぱいなんか。」
臣「ええ?!触ったの!?」
岩「触ってないですけど。」
臣「だったらなんでわかんだよ!w」
岩「別にどこにでもあるおっぱいでしょ。」
臣「そうかなぁ。絶対いいモン持ってると思うんだよな〜。」
岩「……。」
もう早く❀❀のことは諦めてほしい。
こういう会話をもうしたくないから。
直「臣はいまだにLINEも交換出来てないんだから諦めたら?w」
臣「え?」
岩「え?」
どこか余裕な笑みを浮かべてそんなことを言う直人さんに、俺と臣さんは思わず目を合わせた。
臣「まさか…、直人さん…、」
直「バッチリ交換済み♡」
岩「えええ!!」
直人さんが誇らしげに掲げた携帯の画面には、確かに見慣れたアイコン。
あいつのアカウントだ。
臣「いつのまにーーー!!」
直「これから本気出してくから、俺♡」
岩「……っ」
マジかよ。
ほんといつのまに交換してたんだ。
❀❀だってそんなこと一言も言ってなかったのに。
俺の前では直人さんの話は早く終わらせようとしてたし。
直「なーなー、明日の飲み会、❀❀ちゃんも呼ぼうよ!」
臣「あ、それいい!!」
隆「いいっすねー。呼びましょうよ。」
健「ほんなら岩ちゃん声かけといてや。」
岩「え、嫌ですよ。」
臣「なんでだよ!w」
岩「俺はメンバーだけでゆっくり飲みたい。❀❀いたら邪魔。」
なんて。
ほんとは酒の入ったこの人たちと❀❀を絡ませたくないだけなんだけど。
臣「俺たちは邪魔じゃない!」
隆「むしろ大歓迎!」
健「呼んで呼んで!」
岩「いや、いいです。」
直「岩ちゃんが声かけないなら俺から誘っちゃおうかなー♡」
岩「ほんとにいいですって、あいつは!」
俺の大きな声に、みんな少し驚いた顔をして、部屋はシーンとなった。
臣「もしかして岩ちゃん、あれじゃねぇの?」
岩「……。」
臣「なんとも思ってなかった女友達が周りに可愛いとか言われてんの見ていきなり自分も気になり始めちゃう定番のやつじゃないの?w」
隆「あああ!そゆこと?!」
健「なんや!独占欲かいな!やっぱり❀❀ちゃんは俺のモンってか?!」
岩「違いますよ、なんすかそれw」
直「はい、返事来ましたー!❀❀ちゃん明日来まーす♡」
岩「は!?」
臣「やったー!直人さんグッジョブ〜〜〜!!♡」
隆「えー、一緒に飲めるなら俺もちょっと狙っちゃおうかなー///」
臣「なんでだよ、ふざけんなw」
健「俺もちょっと口説いてみよかなw」
臣「だーめ!」
直「❀❀ちゃんは俺が誘ったんだから俺の隣ねーw」
臣「はぁ?直人さんずりぃし!!」
岩「……。」
ダメだ。
またみんな勝手に盛り上がってる。
岩「はぁ…。」
俺はむしゃくしゃした気持ちでその日の仕事を終えて…。
心のモヤモヤをどうにかしたくて、そのままセフレの家に直行した。
女「岩ちゃん、久しぶりすぎる〜!会えて嬉しいっ♡」
ストレスを吐き出すための女も、欲を吐き出すための女も、いくらだっている。
あいつを意識するなんて、どうかしてるんだ俺は。
女「あっ、…やぁん、いきなり?///」
岩「うるせぇな…抱かせろよ。」
女「////」
ほら、俺を見て嬉しそうに頬を火照らせて。
簡単に脚を開く。
こんな女、いくらでもいるんだよ。俺の周りには。
女「あんっ!あぁっ、あぁんっ///」
岩「はぁっ、」
むしゃくしゃする。
全部吐き出したい。全部全部。
女「やぁんっ!岩ちゃんっ!あぁんっ!あぁんっ!///」
俺はその晩、自分の気が済むまで、女の身体にぶちまけまくったのに。
……なんでだろう。
モヤモヤした気持ちは消えないままだった。
岩「はぁ…。」
意識を飛ばした女に背を向けて、携帯を手に取った。
「仕事遅くなるの?大丈夫?」
「帰ってこれなくなっちゃったのかな?無理しないでね。」
❀❀からLINEが来てる。
そうだよな、今日は一緒に晩飯食う約束してたんだから。
せっかく俺の分も用意してくれてただろうに…
俺はこんなとこで何やってんだろ。
❀❀の連絡も無視して、こんなどうでもいい女の部屋で。
岩「はぁ…。」
自己嫌悪…。
結局俺は眠れないまま、シャワーだけ浴びて朝方帰った。
岩「え…っ、」
リビングにはテーブルに突っ伏したまま眠ってる❀❀の姿があって、驚いた。
❀「あ…、お帰りなさい…。」
岩「ただ…いま…。」
なんで…?
まさか俺のこと待ってた…?
❀「あ、もう朝なんだ…。」
❀❀は目を擦りながら起き上がった。
岩「……ごめん。」
❀「ううん、仕事忙し…、…っ」
言いかけた❀❀が、ピタリと止まった。
❀「……仕事じゃ…なかったの?」
岩「……っ」
❀「なんか…いい匂いする。」
岩「……ああ…、うん。シャワー浴びて来たから…。」
❀「女の子の…家?」
岩「うん。」
嘘もつかずに素直に答えたことをすぐに後悔したのは、❀❀がものすごく傷ついた顔をしたから。
❀「なーんだ、そっか。それなら一言くらい言ってよねーw」
岩「ごめん…。」
どうしよう。
また迷惑だとか勘違いして、出て行くとか言い出したら…、、
❀「じゃあ剛典の分のご飯はあたしの朝ごはんにしちゃおーっとw」
岩「……っ」
俺は咄嗟に、無理して笑って冷蔵庫に向かう❀❀の手を掴んだ。
岩「俺の分、あるの?」
❀「……っ」
岩「食べる。今食べる。」
❀「いいって、あたしが食べるからw」
岩「食べたい!」
❀「……っ」
泣きそうな顔で笑う❀❀を見て、昨夜帰ってこなかった自分をぶん殴りたくなった。
❀「別にいいんだよ、無理しなくて。」
岩「無理なんかしてない!…だって…ずっと待ってたんだろ、俺のこと。」
❀「違うよw たまたまここで寝ちゃっただけ!」
岩「……っ」
俺は、気付いたら❀❀のことを抱きしめてた。
❀「剛…典…?」
岩「……っ」
勝手に、❀❀のこと意識して。
みんなの言動にイライラして。
わけがわからない自分の気持ちを発散したくて、朝帰りして。
約束破って❀❀のこと傷つけて。
……俺、何やってんだろ。
ほんと自分がわかんねぇ…。
岩「ほんとに…ごめん…。」
❀「もういいってば…w」
岩「食べていい?昨夜のご飯。」
❀「……わかった。用意するね。」
岩「ありがとう。」
❀❀が作ってくれたご飯は、一晩経っても当たり前に美味しくて。
俺は改めて反省して、また自己嫌悪に陥った。
❀「なんでそんな元気ないの…?」
岩「……。」
❀「女の子とウハウハ遊んで帰って来たんだから元気いっぱーーい!じゃないの?」
岩「いや、ごめん、ほんと…」
❀「違う違う、責めてるんじゃなくて!w」
岩「……っ」
❀「なんか剛典、彼女に必死に言い訳する彼氏みたいw」
岩「え…?」
❀「あたし達、そんなんじゃないでしょ?そこまで謝んなくても別にいいってばw」
岩「……っ」
そう言われたらそうなのかもしんないけど…
どうしてもさっき❀❀が一瞬見せた悲しそうな顔が、忘れられなくて。
❀「ね、今日さ、剛典たち飲み会なんでしょ?」
岩「あ…、」
忘れてた、その件!!
❀「あたし、直人さんに声かけてもらって、行きますって返事しちゃったんだけど、良かったのかな?」
岩「え?」
❀「別にあたし、正式なスタッフな訳じゃないし、ちゃっかり参加していいのかなって…後から心配になって。」
岩「……。」
みんなはお前が来たら大喜びだよ…。
本当は連れて行きたくないけど…
そしたら今日も、俺は飲み会で、❀❀は一人でこの部屋で待ってることになる。
なんかかわいそうで…
岩「大丈夫だよ。お前も来いよ。」
俺はそう言っちゃったんだ。
それを後々ずっと後悔することになるなんて、この時は思いもしないで。