〜剛典side〜
何も言えなかった…。
本気だって言われて。
大事にするから、って言われて。
そんな直人さんの気持ちが、俺には予想外すぎた。
絶対に…一回ヤレれば満足、程度の軽い気持ちだと思ってたのに。
まさか本気で付き合う気だったなんて。
……だったら俺は、どうすればいいんだろう。
このまま身を引いて…二人のことを祝福すればいいんだろうか。
❀❀のことが好きだって…自覚したのに…?
こんな失恋の仕方って…あるかよ…。
……❀❀は本当に本気で、直人さんのことが好きなんだろうか。
それだけは…もう一度確認しよう。
それでもし、❀❀がそうだって言うなら…
俺はもう、悪あがきしない。
自分の気持ちにも蓋をして、もう❀❀のことは忘れよう。
岩「ただいまー。」
❀「おかえりーーっ!」
そんな決意は、❀❀の笑顔を見たら、すぐに崩れ去った。
❀「ご飯できてるよ!食べよ食べよっ♪」
岩「……。」
やっぱり嫌だ。
このまま❀❀を失うなんて。
直人さんに取られるなんて、絶対に嫌だ。
岩「……❀❀。」
❀「え…?」
チュッ。
❀「な、なんでキスするの!?///」
じゃあなんでお前は赤くなんの?
俺にキスされただけで、なんでそんな顔をする?
岩「直人さんのこと、ほんとに好きなの?」
❀「また…その話…?」
岩「答えろよ。」
❀「好きだよ。好きじゃなきゃ付き合ったりしない。」
岩「……っ」
❀「やっ、や…っ、剛典…っ!///」
だったら。
俺のキスを拒めよ。
❀「んん…っ///」
こんな中途半端な態度を取られたんじゃ、俺だって諦めきれない。
❀「なんで…剛典は…キスするの…?///」
岩「わかんないの?」
❀「……ムカつくから?///」
お前のことが、好きだからだろ。
❀「んん…っ、んぅ…っ!///」
ガクン…ッ
岩「何やってんの…。」
❀「////」
足に力が入らなくなったのか、崩れ落ちた❀❀を俺はグイッと抱き上げてやった。
❀「だって…、何今の…柔らかいの…///」
岩「……はぁ、」
俺は❀❀のほっぺを両手でむにっと挟んだ。
岩「お前さぁ、ちょっと舌入れただけで腰抜けてるレベルなのに、そんなんであんな遊び人と付き合えんの?無理だろ!」
❀「……っ///」
岩「こんな出会ったばっかで直人さんのこと好きだとか、そんなん信じらんねぇから!」
❀「…ちょ、っ、…たかの…っ、んんっ///」
俺は夢中で❀❀の唇を奪った。
夢中で❀❀を追いかけて、その舌をなぞって、吸い付いて…。
❀❀が腰から崩れそうになる度に、しっかりと抱きとめて。
❀「…はぁ、…はぁ…っ///」
岩「……はぁ、///」
❀❀のこんな顔、初めて見た…。
とろんと潤んだ瞳で、俺のことをじっと見つめてる。
❀❀もこんな女の顔、すんだな…。
ドクン…ッ
❀「じゃあ…、剛典が…教えてよ…///」
岩「は…?」
❀「あたしがちゃんと直人さんと付き合えるように…、」
岩「……何言ってんの?」
❀「どうやったらこんな風に…気持ち良くなるキス、できるの…?///」
岩「……っ」
❀「教えて…?///」
岩「……っ」
ふざけんな、って思った。
なんで、俺が。
なんで俺が、二人が付き合うことの手助けみたいな真似、しなきゃなんねぇんだよ。
…って、、そう…思ったのに…、、
❀「あ…っ、…んん…っ!///」
目の前に、俺のキスを求めてる❀❀がいて。
それで我慢しろなんて、無理な話だった。
もう、止まらない。
キスが止まらない。
俺は❀❀を抱き上げてソファーに座って。
❀❀を抱っこする形で、何度もキスを続けた。
❀❀の長い髪に手を差し込んで…
頭の後ろを支えながら、何度も❀❀を引き寄せる。
……くちゅ、 …れろ…、っ
二人の唇から漏れる、生々しい音。
❀「はぁ、…っ///」
経験値ゼロのくせに、必死に俺についてこようとする❀❀が、可愛くて…。
キスすればするほど、愛おしい気持ちがこみ上げてくる。
女とキスしてこんな気持ちになるなんて、初めてだ。
岩「……気持ちいい…?」
❀「……っ、……コクン///」
岩「とろけきった顔してんじゃん…w」
❀「え、…あたし…そんな顔、してる…?///」
岩「うん…。すげぇ気持ち良さそうな顔。」
❀「////」
ぎゅっ…
岩「え…、///」
照れ隠しなのか、❀❀が俺にぎゅっと抱きついてきて…
俺の心臓が、うるさく音を立ててる。
なんだよこれ…。
すげぇドキドキする。
❀「剛典…、///」
岩「な、なんだよ…///」
❀「…もっと…キス、したい///」
岩「////」
今度は❀❀から、ゆっくりと唇を重ねてきた。
❀「…ん、…んん…っ///」
また俺が舌を絡めれば、甘い声が漏れ出る。
なんだよ…。
なんなんだよ…。
❀❀からキスしたいって言ってくれるとか…
❀❀も俺のこと好きなんじゃねぇの?
違うのかよ。
本当に直人さんが好きなら…、こんな風に俺を求めたりしないだろ。
岩「はぁ、っ///」
キスに溺れながら、どんどん期待してしまう。
岩「❀❀…、」
その時だった。
❀「あっ、」
❀❀の携帯が鳴って。
❀「ごめん、」
❀❀はあっという間に俺の膝から降りていった。
❀「はい、もしもし!あ、はいっ!お疲れさまです!」
……もしかして、直人さん…?
❀「あ、……はい、えっと…///」
絶対そうだ。
❀「はい、明日行きます。えっ、あ、はい、ありがとうございます/// はい、じゃあ…明日、はい。おやすみなさい///」
❀❀は電話を切ると、少し気まずそうに俺を見て。
❀「えっと、ご飯食べよっか、冷めちゃうよ///」
そう言った。
岩「……電話、直人さん?」
❀「あ、うん///」
俺はゆっくりとテーブルに座った。
❀「明日また仕事行くね。さっき剛典のマネージャーさんにも連絡して。そしたら直人さん、それ聞いたみたいで…、明日会えるの楽しみにしてるねって、電話くれたの///」
岩「……。」
嬉しそうに照れながら、俺にそんな報告してくれなくていい。
なんなんだよ。
俺としたキスはなんだったんだよ。
❀「はい、じゃあいただきまーす!」
岩「いただきます…。」
ご飯を食べ始めると、❀❀はすっかりいつも通りで。
友達の〇〇ちゃんがどうしただとか、前の職場の先輩がどうしただとか、そんな世間話ばかり。
さっきまで、俺とキスしてあんなエロい顔してたくせに。
俺はモヤモヤしたままシャワーを浴びて。
ベッドに入ると、❀❀がまた無邪気にくっついてきた。
❀「湯たんぽ剛典〜〜〜♪」
岩「……。」
❀「はぁ、気持ちぃ♡」
岩「……。」
こいつがどういうつもりなのか、全然わかんねぇ。
直人さんのこと好きだとか言いながら、俺とあんなにキスして、こうしてくっついてきて。
毎日一緒に寝てるとか。
……おかしくない?
❀「……明日…、直人さんに会えるの楽しみ…/// おやすみなさい。」
岩「……っ」
最後のセリフがそれかよ。
❀❀は何事もなかったかのように、スヤスヤと寝息を立てて。
❀❀に抱きつかれてる俺は、眠れるわけがない。
あんなキスをした後で。
身体が反応しないわけがないだろ。
岩「……はぁ、///」
もう一度、キスしたい。この唇に…。
❀❀の顔がとろけるくらい、何度も何度もキスをして…、
そのまま、❀❀を食べてしまいたい。
当たり前の男の欲望は、おさまることを知らなくて。
俺はなかなか眠れないまま、悶々と苦しい時間を過ごした。