ワインバー　エレヴァージュ、メルマガ・ベスト・セレクション。

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川上弘美さんの「真鶴」

本文

澄んだ空気と、厨房の換気扇の音が、
静かな室内に脈動を与えています・・・。

そんな休日明けの午後に、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
　　　　　（と書きつつ、森星のウエストが気になって・・・）

ところで、
ゴールデンウィーク、
すっかり休ませていただきました！。

いろんなお店に行かせていただき、
こんなにのんびりと過ごすのは、14年ぶり・・・。

またしばらく、休めない体制に入るので、
とにかく、ゆっくり休ませていただきました。
　　　　（翻訳すれば、鎧美女見放題・・・）

また今晩から、
気持ちを引き締めて、
頑張りたいと思います（真面目に）。

では早速、
熟成シャンパン祭り？の詳細を、
記していきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
→◎アヤラ　シャトー　ダイ（D'AY)　ブリュット１９７５年
　５０ミリ￥４８００

→◎モエ　エ　シャンドン　ドライ　アンペリアル１９７１年
　５０ミリ￥５９００

→◎ランソン　ゴールドラベル１９９３年（マグナムボトル）
　７０ミリ￥３８００

→◎ボランジェ　グランダネ　ブリュット１９７３年
　５０ミリ￥７２００

→◎ローラン　ペリエ　ヴィンテージ　ブリュット　１９６１年
　（ハーフボトル）　５０ミリ￥５８００

→◎モエ　エ　シャンドン　ブリュット　アンペリアル
　１９７８年　５０ミリ￥４４００

→◎モエ　エ　シャンドン　”ドンペリニョン”１９７１年
　５０ミリ￥７８００
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、
今日は、これも飲めます～。
　　　（責めて、ナンボ）

●シャトー　モンローズ　1975年　５０ミリ￥４０００

★ポール　ペルノ家
◎バタール　モンラッシェ　２０１６年　５０ミリ￥４４００

★ピエール　モレ家
●ヴォルネイ　サントノ　２００４年　７０ミリ￥２３００

★ジャブイイ社
●ポマール　１９６４年　７０ミリ￥３９００
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
（中略）
ところで、
今日はちょっと余談を・・・。

仕事に行き詰っている、
一人の助手の方と会話しているときに、
いろいろ、思うところがありました。

まずは、
川上弘美さんの
「真鶴」という小説を引用します。

「窓ごしにみると、空の色がうすい。灰色でもなく、あおでもなく、

まあたらしい水彩の絵の具をしぼりだしたときに、赤ならばごく薄ま

った赤の、黒ならばごく薄まった黒の、ほんのわずかにまとった水が、

とろりと絞りだされたねばりけのあるかたまりのまわりに滲みだすこ

とがある、その水のように希薄な色だった。

　においは雨のものなのか、海のにおいではなく。藤沢を過ぎたころに

降りだし、二宮のあたりからきれぎれに見えはじめた海の面に、つきさ

さるように落ちていった。」

『真鶴』川上　弘美　Ｐ．２０４～２０５　Ｐ／Ｂ　文芸春秋

ここで少し、
私自身のことを話します。

小さいころから、
（自分で言うのも何ですが）
とても頭が良く、なんでも出来ました。

そして、
いろんなスポーツも何種類も同時にやって、
「そこそこ」巧くこなしていました。

しかし、
文章だけは、どうにも、
思い通りにいきませんでした。

書きたいイメージがあるのに、
どうやっても近づけない。

いくら悩んで、
文字を書き直したとしても、
描くイメージと、かけ離れたまま。

「そのもの」を表現するのは、
こんなにも難しいことなのか。

ここで、
話が長くなりますが、
西川美和監督が書いた、
映画「ゆれる」の文庫版を載せます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

橋の袂で佇む弟（猛）、
橋を渡ろうとする智恵、
それを、助けようとする兄（勇）。

そんな三角関係が、
複雑に絡み合い・・・、
湿気を含んだ、情の濃淡が続いていきます。


智恵の回想シーンを載せます。

『猛君は高校を出て、東京に行くことに決めたというのです。もう通う

学校も決めたというのです。猛君の卒業は、すぐ目の前に迫っていた時

でした。私と会うようになってから、ようやっとふた月が経つ頃でした。

　私は面食らって、何と言ってよいか戸惑いました。そして、精一杯の

思いで口を開きました。

　「そういうこと、いつから考えてたの」

　「前から」

　「どれくらい前」

　「もうずっと前」

　猛君は悪びれる様子もなく、当たり前の事実を、当たり前に答えている

という風でした。

　私が言葉を失って、ただ黙っていたら、

　「智恵ちゃんも行ってみる？」

　そう私に問いかけました。行けるわけがありません。私はまだ高校があ

と二年も残っているのだし、東京なんかに行って、何をすると母に言えば

いいのか、わかりません。どうしてそんな乱暴なことをこの人は言うのだ

ろう、と困惑しながらも、乱暴でもそうやって私を誘ってくれたことが不

思議に嬉しくて、涙ぐんで黙っていたら、猛君はしばらく私の様子を眺め

たあとで、ぽつりとこう言いました。

　「お前は意志ってものが無くて、おもしろくねえ」』

西川美和『ゆれる』Ｐ．５２～５３　Ｐ／Ｂ　文春文庫



そして、
猛君が東京に出てしまった後、
しばらく年月が経ちました。

「写真の仕事で外国に出かけているとかで、おばさんの葬儀に戻って来られ

なくなったらしく、内々にはずいぶん騒ぎになっていたのです。写真の学校

に通うと言って町を出て行った猛君が、実際その仕事に就いて忙しくしてい

るのだということを私はその時ようやく知りました。興味を持つことがころ

ころと変わり、飽きっぽくて辛抱のきかない彼が、それから十年経っても志

した道でやっているとうことに少し驚きました。洋平君が興味を持って、あ

れこれ稔さんに猛君のことを聞くのを耳の端っこで盗み聞きして、こっそり

街中の大きな本屋さんに出かけて、「早川猛」と銘打たれた写真集を買い込ん

だりしました。写真の良し悪しなんてとても私にはわからなくて、どういう

基準で猛君がこんな本を出せるようになったのかということは正直なところ

ピンときませんでしたが、それでも猛君の撮ったものを見ると、これが私の

見ることのなかった、猛君の見てきた風景なのだと思って、一枚一枚、丹念

にページをめくりました。とても冷たくて、とてもきれいな写真だと思いま

した。胸の中がひりひりと熱くなるのでした。」　同書　Ｐ．５８


いろいろ、
思うところがあります・・・。


私が文章を書くことに、
惹かれるようになったのは、
「書きたくても、どうしてもできない」からでした。

そして、
この仕事（飲食業）を始めたきっかけも、
「これは、一生かかってもできないかもしれない」
と、思い知らされたからです。

できないから、
「できるように」なんとか考え、
苦しみ、試行錯誤の後に、
ようやく、その「対象」に近づいていく。

その「過程」に、
とても興味があるから。

い、以上です・・・。
（またもや自分に酔って・・・気持ちよくなり）
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
では早速、
最近飲んだワインの、
試飲ノートを載せていきます。

●シャトー　ランクロ　１９８３年
～１９８３年のボルドーは、渋みがしっかり凝縮して、葡萄の
コク、パワーが素直に出ています。７～８年ほど前までは、タン
ニンが少し強くて、ちょっと味わいが「閉じ気味」だったのですが、
最近は少し渋みが解れて、葡萄のなめらかな甘さがどんどん出て
美味しさが増してきています。

　さて、この蔵の１９８３年、柔らかいです。コクがあります。
なめらかなポムロールらしい深みが出ていて、美味しさを素直に
感じることができます。飲み頃に入ってきて、これからも、熟成
して、美味しさが増していくでしょう。

◎ローラン　ペリエ　１９６４年ブリュット
（ハーフボトル）
～１９６４年のシャンパンは、非常に偉大なヴィンテージです。酸が綺麗
で、果実味の立体感がはっきりしています。ただし、あまりにも評価が高い
ために、値段がかなり高額で、なかなか、買う機会に恵まれないのが残念な
ところ。ただし、隙を見て、購入したいと思っています。

　さて、１９６４年のローランペリエ、ダラっとした溶けた果実味の要素
（いわゆるシェリー的なニュアンス）がありながら、リーンという酸味が
奥底にあるため、丸みがありつつ、上品な甘さを感じます。ローランペリ
エは、１９６１年も最近味わっているのですが、１９６４年ヴィンテージ
は、やはりポテンシャルが高いなと感じます。

★フランソワ　ラマルシュ
●エシェゾー　１９９６年
～１９９６年ヴィンテージは、ここ２～３年の間、ようやく果実味が「開い
て」美味しくなり始めています。しばらくの間は、キューン！という研ぎ澄
まされたミネラルと酸がありながら、果実味の内部（コア）がちょっと弱か
ったのです。今は、奥底に柔らかいコクが素直に出て、ふくよかな果実味の
魅力が出ています。

　さて、この蔵の１９９６年、非常に完成度が高いです。エシェゾーらしい
ふわふわした、イチジク系の赤い果実の魅力と、１９９６年らしい酸とミネ
ラルの綺麗さがかみ合って、本当に「偉大なエシェゾー」の雰囲気があります

★フランソワ　ラマルシュ家
●グランエシェゾー　１９９９年
～１９９９年ヴィンテージは、果実味が豊かで、たっぷりした丸みがあって、
とても「わかりやすい」ヴィンテージです。ただし、酸とミネラルが重厚な
果実味の背後に隠れているので、少し、ボテっと、重たい味わいです。

　さて、この蔵の１９９９年、やはり「重たい」です。しかし、ふわふわに
なりがちなグランエシェゾーの内実に、肉というか豊かさを与えて、１９９９
年の「重さ」が、かえって良い結果をもたらしてくれています。

★ジョセフ　ドルーアン社の自社畑（ドメーヌもの）
●ボーヌ　クロ　デ　ムーシュ　１９８９年
～１９８９年は、果実味が充実した、偉大なヴィンテージです。果実味
の甘さを素直に感じて、「美味しさ」を理解しやすいからです。１０年
ほど前は、少し重たい要素もありましたが、今は、少しずつ酒質が軽く
なって、美味しさが増しています。

　さて、この蔵の１９８９年、だいぶ、透明感が出てきて、美味しくな
ってきました！。この蔵は、重層的な味わいと、酸の硬さがあるので、
美味しくなるまでに時間がかかります。実際にこのワインは、ボーヌ
村の石灰質や、酸の綺麗さがようやく出始めて、飲み頃になってきました！。
ただし、あと２０年以上は余裕で熟成できる力があると思います。

（以下、試飲ノートは省略）

い、以上です・・・。
（真面目に）

では、よい初夏の空気を、
味わって下さい。

最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

ElevageⅡ（エレヴァージュ　セカンド）
吉田　岳史