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遠藤祐太
今やインターネット広告において国内最大手の企業となったサイバーエージェント。その創成期から入社し、数多くの新規事業創出に手腕を振るっていたのが西晋一さんだ。西條さんが立ち上げた「XTech」「XTech Ventures」が今、目覚ましい成長を遂げている。
ゼロからの新規事業開発、実力者たちとの衝撃的な出会い。インターネットバブルとその崩壊の中など激動のインターネット黎明期を駆け抜けていった西條さん。
サイバーエージェントを通じて企業に必要な資質について語る。
大企業終身雇用という考え方が変わり、第二新卒という言葉がはやり始めた1999年終わりごろ。当時は、新卒で入社した伊藤忠で為替ディーラーをしていたが、ちょうど転職を考えていた時期でもありました。
ベンチャー起業の転職フェアに出向いたことがきっかけでサイバーエージェントの面接を受けることになり、その時に対応してくれたのが代表取締役である藤田晋さんでした。
「インターネットがこれからすごいことになるので、すぐ来てください。」と言われ、その場で内定が出て転職を決めました。「新規事業の部署に行きたい」という希望は通りましましたが、入社初日、デスクの上に置いてあったのはパソコンが入った箱とメール設定マニュアルだけ。
実は、僕に内定を出すために作った、たった一人の部署だったのです。それまで大企業の管理・金融系の部署にいたので、最初はどう動いていいかがさっぱりわかりませんでした。社会人5年目にして、生まれて初めてテレアポをしたり。ラッキーだったのが、隣の席が宮嶌裕二さん(現 株式会社モバイルファクトリーCEO)だったことでした。いろいろなことを教えてもらったおかげで、一気にネットに詳しくなりましたし、海外事業も含め「こんなにみんなネット業界のことを知っているんだ」と一気に意識が上がりました。
さらに入社して半年で僕が子会社社長になった時の役員が、藤田さん、堀江貴文さん(元ライブドア代表取締役社長CEO)、熊谷正寿さん(現 GMOインターネット株式会社代表取締役会長兼社長・グループ代表)という構成でした。
サイバーエージェント、GMO,ライブドアの合弁会社だったんです。合弁会社(外国資本と自国資本が共同出資して設立する運営会社)ってベンチャーでなかなか経験できないうえに、すごい人達と仕事ができたのがラッキーでしたね。
役員は三者三様で、それぞれ発想が違うと感じることがよくありました。例えば、僕が「全然だめだ」と思った時でも、藤田さんは見方が違うんですよ。非常にポジティブなんです。堀江さんは、突然メーリングリストに登場してものすごいツッコミを入れてきたときがありました。「こんな細かい会話を見ているのか」と思いましたね。
熊谷さんは当時から抜群に人脈があったので、「こういう人がいるから紹介しようか」と言ってくださいました。
子会社社長といっても、起業したかのように自分の力で運営していけたのがありがたかったですね。経営者としての成長が全然違ったと思います。因みに現在、Xtechも子会社がすでに5社あります。僕は、口は出すものの基本的には任せるようにしています。
自分たちでちゃんと考えさせるようにしていますね。
投資は人脈。相手が良いコミュニティに関連しているかはどうかでほぼ決まる。
一方、投資については「これから来る」っていう起業はわからないという前提で考えています。時間がたつとことで、企業が行っているビジネスはどんどん変わっていきますから。ただ、見るポイントは、企業の規模によって全く異なります。
イメージとしては、人間に投資するのと同じです。例えば、シード期の企業は人間でいうと赤ちゃん。事業計画書がない場合は、夫婦がこれから家族を形成していくという段階。ミドル期になると、中学生・高校生とか大学生といった具合です。赤ちゃんだとしょっちゅう面倒見てあげるべきだし、中学生・高校生ならそんなに口を出さえたくないだろうし、といったイメージです。
シード期の企業、いわば赤ちゃんに投資する場合、その赤ちゃんがすごく出世するエリートになるかどうかはわかりません。ですが、ヒントは様々なところにあります。
例えば、人間でいうと家庭環境。両親が高学歴もしくは裕福な場合「おそらく高等教育を受けるだろう。その場合は成長する確率が高そうだ」という推測ができます。企業でも同じで、創業者が積極的に経営の勉強をしている経歴を持っていれば、その人が立ち上げた企業は成長する可能性が高いだろうと推測できる訳です。
またシードの場合は一人で起業というケースも多いので、この人が優秀な人を集められそうかどうかというのもすごく見ますね。
人徳があり、魅力的な人はいい人を集められますが、逆に「この人のもとで働くイメージが湧かないな」という人はだめです。
シードでは事業計画もほぼみません。もちろん、変な資本政策になっていないかどうかは見ますが、事業の方向転換も起こると思うので。
素直で魅力的な人だったらいいなと思います。どこまで行っても、見るのは基本「人」ですね。