天国への階段 裏版・中学生日記
第1章 1
六年生の時から、ぼくが上がる中学校にいい噂はなかった。
だから勉強のできる子とか、お金持ちの子は、私立の学校を受験する。ただテレビのニュースでワイロの話がたまに出るけど、お金で私立の中学校に入れるってことは、そんなにはないらしい。コネとかいって、家のお父さんが偉い社長さんとかお医者さんで、学校を経営してる人と知り合い、とかだとまた違うらしいけど。
ともかく、中学校に上がる時に、勉強ができて、家の親もしっかりしているところから、ごっそり抜けてしまった。クラスで上から五人抜けたら大きい。
小学校三つが一つの中学校に固まって、入学式を迎えた時は、古いランドセルにさよならして、新しい学ラン着て、少しは希望もあるかもって思った。けれど、新一年の、前向きでいい雰囲気っていうのは、夏休み前後で早くも崩れてしまった。成り立つ授業がほとんどなくて、まじめな子もやる気をなくしてしまう。ぼくは大人しく座ってるけど、もともと勉強できないし、騒々しくて余計わけわかんなくなった。他の子みたいに塾も嫌だし、もう何もやる気がしない。
ぼーっとしているうちに、ぼくは新しい友達を作り損ねていた。以前の学校からの遊び友達で、けっこう頭がよかった仙石(せんごく)君は、私立に落ちてこの学校に上がってから、何だか話しかけにくくなっていた。
そんなある日の昼休みのことだった。
ぼくは廊下で、とてもからだの大きい先輩に、声をかけられた。
「あ、ねえ君一年生?」
「え、あ、はい? そうですけど……」
「いい体格してるね。柔道部に入らない?」
…………。
ぼくは太っている。でも背は低いし、運動音痴だし、筋肉がついているわけじゃない。何だかバカにされた気もして、腹が立つより屈辱って感じがしてうつむいた。
1
NIGHT
LOUNGE5060